
妊活コラム
Ninkatsu Column
不妊治療中のあなたへ:揺れ動く感情を理解する東洋医学的セルフチェック(五志と五臓六腑の関連、採点付き)

桂川レディースクリニック 「こうのとり鍼灸」担当鍼灸師 船越登紀夫です。
不妊治療中は、身体的負担だけでなく精神的にも
とても大きなエネルギーを必要とします。
様々な出来事がきっかけとなり、喜び、悲しみ、怒り、
不安など様々な感情の波が押し寄せてきます。
東洋医学ではこれらの感情を「怒・喜・思・悲・恐」に分けて
「五志(ごし)」と呼び、心身への影響、
特に「五臓六腑」の機能と深くかかわっていると考えます。
今回のコラムでは、不妊治療中に経験しやすい感情と、
それらが東洋医学的にどの臓器に影響を与え、
どのように不妊に関与するのか?を解説します。
東洋医学における五志と五臓六腑の関係
東洋医学では、人間の感情は単なる心の動きとして捉えるのではなく、
五臓(肝・心・脾・肺・腎)という五つの主要な臓器と
密接に結びついていると考えます。
さらに、五臓と表裏一体の関係にある六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)も、感情の影響を受けます。
各感情の詳細と不妊治療への影響(五臓六腑との関連)
それぞれの感情が、不妊治療中の心身、
そして五臓六腑に具体的にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
1.怒(ど):肝と胆
- 対応する臓腑
肝(かん)は血を貯蔵し、全身の気の流れをスムーズにする役割を担います。
胆(たん)は肝の余った気を貯蔵し、決断力を司るとされます。
- 不妊治療における感情と影響
治療への不満、他者への嫉妬、パートナーとの衝突などが募ると、
肝の気が滞り、気の巡りが悪くなります。
これにより、イライラ感が増し、些細なことで怒りっぽくなる、
頭痛、めまい、肩や首のこり、目の疲れ、
月経不順などを感じやすくなることがあります。
気の流れが滞ると、血液の流れも悪くなり、
子宮や卵巣への血流不足を招く可能性があります。
また、精神的なストレスはホルモンバランスを乱すことも知られています。
2.喜(き):心と小腸
- 対応する臓腑
心(しん)は血液を全身に送り出すポンプの役割を担い、
精神活動や意識を司るとされます。
小腸(しょうちょう)は胃で消化されたものを
さらに消化吸収する役割があります。
- 不妊治療における感情と影響
治療の進展への期待、良い結果の喜びは、適度であれば心の気を緩め、
血行を促進しますが、過度な期待や興奮は心の気を散らし、
精神的な疲労や不安定につながることもあります。
不妊治療中は、治療の進展に一喜一憂しがちですが、
過度な感情の波は心臓に負担をかけ、
自律神経の乱れにつながる可能性があります。
これがホルモンバランスに影響を及ぼし、
不妊の一因となることも考えられます。
3.思(し):脾と胃
- 対応する臓腑
脾(ひ)は飲食物から栄養を吸収し、全身に送る役割を担い、
思考や意欲とも深く関わります。
胃(い)は飲食物を一時的に貯蔵し、消化する役割があります。
- 不妊治療における感情と影響
治療の成功への不安、経済的な心配、将来への悩みなどが募ると、
考えすぎや心配事が脾の気を滞らせ、消化吸収機能を低下させます。
脾は栄養を全身に運ぶ役割があるため、機能が低下すると、
妊娠に必要な気血の生成が滞り、
子宮や卵巣への栄養供給が不足する可能性があります。
また、消化不良や食欲不振なども引き起こしやすくなります。
4.悲(ひ):肺と大腸
- 対応する臓腑
肺(はい)は呼吸を司り、全身に気を巡らせる役割を担います。
大腸(だいちょう)は消化された食物の水分を吸収し、
不要物を体外へ排出する役割があります。
- 不妊治療における感情と影響: 治療がうまくいかなかった時の悲しみ、
流産や着床不全による喪失感などが続くと、
深い悲しみは肺の気を消耗させ、呼吸を浅くしたり、
息苦しくなったりすることがあります。
また、肺の機能低下は、全身の気の巡りを悪くし、
子宮や卵巣の機能低下につながる可能性があります。
また、呼吸が浅くなることで、体全体の酸素供給が不足し、
妊娠に必要なエネルギーが不足することも考えられます。
5.恐(きょう):腎と膀胱
- 対応する臓腑
腎(じん)は生命エネルギーを貯蔵し、成長や生殖、
水分代謝などを司るとされます。
膀胱(ぼうこう)は尿を貯蔵し、排泄する役割があります。
- 不妊治療における感情と影響
不妊治療への不安、将来への不安などが募ると腎の気を乱し、
エネルギーを消耗させます。
腎は生殖機能と深く関わっているため、機能が低下すると、
ホルモンバランスの乱れ、卵子の質の低下、着床しにくい体質など、
不妊に直接的な影響を与える可能性があります。
五志を客観的に捉えるためのセルフチェック
ご自身の感情の状態を客観的に把握することは、
不妊治療をより穏やかに進める上で大切です。
以下の質問とチェック項目に答えて、点数を記録してください。
1.怒(ど)のセルフチェック
- 質問:
- 最近、治療のことでイライラしたり、不満を感じることが多いですか?
- 他の人の妊娠報告を聞くと、複雑な気持ちになりますか?
- パートナーや医療スタッフに対して、つい感情的に接してしまうことはありますか?
- チェック項目:
- 頻度: ほぼ毎日 ( 4 点 ) 週に数回 ( 3 点 ) 時々 ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
- 強度: 非常に強い ( 4 点 ) 強い ( 3 点 ) やや強い ( 2 点 ) 弱い ( 1 点 )
怒の合計点: 頻度の点数 + 強度の点数 = ( )点
2.喜(き)のセルフチェック
- 質問:
- 治療のわずかな兆候にも期待を持ち、喜びを感じることがありますか?
- 検査結果が良いと、とても安心しますか?
- 治療のことで心が弾むような瞬間はありますか?
- チェック項目:
- 頻度: ほぼ毎日 ( 4 点 ) 週に数回 ( 3 点 ) 時々 ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
- 強度: 過剰に感じる ( 4 点 ) 普通 ( 3 点 ) 弱い ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
喜の合計点: 頻度の点数 + 強度の点数 = ( )点
3.思(し)のセルフチェック
- 質問:
- 治療がうまくいくかどうか、いつも不安に感じていますか?
- 治療費や今後の経済的な負担について、よく考えてしまいますか?
- 答えの無いことを考え続けたり、なぜ妊娠できないのか、
原因について深く考え込んでしまうことがありますか?
- チェック項目:
- 頻度: ほぼ毎日 ( 4 点 ) 週に数回 ( 3 点 ) 時々 ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
- 影響度(頻度と捉えてください): 常に考えてしまう ( 4 点 ) よく考えてしまう ( 3 点 ) 時々考える ( 2 点 ) ほとんど考えない ( 1 点 )
思の合計点: 頻度の点数 + 影響度の点数 = ( )点
4.悲(ひ)のセルフチェック
- 質問:
- 治療がうまくいかなかった時、深く悲しみますか?
- 流産や着床不全の経験があり、
まだその悲しみから抜け出せないと感じることがありますか?
- 時々、もう諦めてしまうべきかと考えてしまいますか?
- チェック項目:
- 頻度: ほぼ毎日 ( 4 点 ) 週に数回 ( 3 点 ) 時々 ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
- 持続時間: ほぼ一日中 ( 4 点 ) 数時間 ( 3 点 ) 数十分 ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
悲の合計点: 頻度の点数 + 持続時間の点数 = ( )点
5.恐(きょう)のセルフチェック
- 質問:
- 注射や採卵などの治療に強い不安や恐怖を感じますか?
- 将来、子供を持てないかもしれないという不安が
頭から離れないことがありますか?
- 検査の結果を聞くのが怖いと感じることがありますか?
- チェック項目:
- 頻度: ほぼ毎日 ( 4 点 ) 週に数回 ( 3 点 ) 時々 ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
- 程度: 強い恐怖を感じる ( 4 点 ) 不安を感じる ( 3 点 ) 心配になる ( 2 点 ) ほとんどない ( 1 点 )
恐の合計点: 頻度の点数 + 程度の点数 = ( )点
セルフチェックの結果と五臓の状態
セルフチェックの合計点から、ご自身の感情の状態と、
それがどの五臓に影響を与えている可能性があるかの
目安を知ることができます。
【点数の目安】
- 2~4点: 比較的バランスが取れている状態と考えられます。
- 5点: 注意が必要な状態かもしれません。
ご自身の状態をもう少し観察してみましょう。 - 6~8点: 感情が強く出ている状態です。
心身のケアを意識しましょう。
各感情と五臓の関連性:
- 怒(肝): 合計点が6点以上の場合、
肝の気の流れが滞っている可能性があります。
イライラしやすい、頭痛や肩こりを感じやすいといった
症状が現れやすいでしょう。 - 喜(心): 合計点が6点以上の場合、
心の気が過度に高ぶっている可能性があります。
落ち着かない、眠りにくいといった症状が現れやすいでしょう。 - 思(脾): 合計点が6点以上の場合、脾の気が滞り、
消化機能が低下している可能性があります。
食欲不振や胃もたれを感じやすいでしょう。 - 悲(肺): 合計点が6点以上の場合、
肺の気が弱まっている可能性があります。
呼吸が浅い、疲れやすいといった症状が現れやすいでしょう。 - 恐(腎): 合計点が6点以上の場合、
腎の気が弱まっている可能性があります。
不安を感じやすい、夜中に目が覚めやすいといった症状が現れやすいでしょう。
感情のバランスを整えるための改善ポイント
セルフチェックの結果を踏まえ、ご自身の感情のバランスを
整えるための改善ポイントをいくつかご紹介します。
- 感情を認識し、受け入れる: 湧き上がってくる感情を否定するのではなく、
「今、私は怒っているんだな」「悲しいんだな」と認識し、
受け止めることが大切です。 - リラックスできる時間を作る: 意識的にリラックスできる時間を作りましょう。
深呼吸をする、瞑想をする、音楽を聴く、アロマを焚くなど、
ご自身に合った方法を見つけてみてください。 - 適度な運動を取り入れる: 軽いウォーキングやストレッチなど、
無理のない範囲で体を動かすことは、心身のリフレッシュにつながります。 - 誰かに話を聞いてもらう: パートナー、家族、友人など、信頼できる人に
気持ちを打ち明けることで、心が楽になることがあります。
桂川レディースクリニックでは不妊症看護認定看護師による
看護相談(対面もしくはオンライン)も行なっていますのでご活用ください。 - 趣味や好きなことに時間を使う: 治療のことを一時的に忘れられるような、
楽しい時間を持つことは、心のエネルギーを充電するために重要です。 - 十分な睡眠をとる: 質の高い睡眠は、心身の回復に不可欠です。
寝る前のカフェイン摂取を控えたり、
リラックスできる環境を整えたりする工夫をしましょう。 - 東洋医学的なアプローチを検討する:
- 鍼灸治療: 体のツボを刺激することで、気の流れを整え、
自律神経のバランスを調整し、感情の安定を促す効果が期待できます。
特に、今回のセルフチェックで点数が高かった感情に対応する
臓腑のツボを刺激することで、より効果が期待できるでしょう。
- 漢方: 体質や症状に合わせて処方される漢方薬は、
心身のバランスを整え、感情の安定をサポートすることがあります。
- 食養生: 東洋医学の考えに基づいた食事法を取り入れることで、
内側から心身のバランスを整えることができます。
例えば、イライラしやすい場合は肝を休める食材を、
不安を感じやすい場合は腎を補う食材を取り入れるなど、
食生活に取り入れてみましょう。
- 鍼灸治療: 体のツボを刺激することで、気の流れを整え、
ご自身の感情の状態を把握し、適切な方法でケアしていくことは、
不妊治療を乗り越える上でとても大切です。
今回のセルフチェックの結果はあくまで目安として捉え、
もし気になる点があれば、クリニックやこうのとり鍼灸へご相談ください。
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桂川レディースクリニック併設 こうのとり鍼灸はこのような方におススメです。
◇ 冷えが気になる
◇ 疲れが取れない
◇ 自律神経が乱れているかも?
◇ 運動不足で代謝が悪い
◇ ホルモンバランスが悪い
◇ ストレスが溜まっている
もし、当てはまるものがあれば、こうのとり鍼灸に相談に来てくださいね。
「健康」に近づけ、一緒に妊娠しやすい身体づくりをしていきましょう。
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【こうのとり鍼灸ルーム】
開催日:毎週水・土曜日 14:00~19:00
受付時間(14時・15時・16時・17時・18時)*施術時間は40分程度
場所:当院4階 エステルーム
料金:不妊治療サポート(鍼灸治療、自律神経調整を含む) 7,000円(税込)
担当:船越鍼灸整骨院 船越 登紀夫
*ご予約は1回分ごとの受付になります
◇ 船越鍼灸整骨院 → https://funa-in.com/