院長の不妊治療ブログ第12回 人工授精の有用性について
スタッフブログ
皆さん、こんにちは
桂川 レディース クリニック院長
生殖医療専門医の 桂川 浩 です。
不妊原因が不明の女性に対して、
IUI(人工授精)がよく施行されています。
これは体外受精の代替医療です。
ところが、2013年にイギリスNICE(国立医療技術評価機構)から
「原因不明の不妊カップルにIUIをルーティーン
に提案すべきではない」という見解が出され、
私はこれに対して常日頃から疑問に思っていました。
実際のところ、どうなのだろう?
私は海外文献を読み漁っていたところ、
興味深い論文を見つけました。
「排卵誘発剤を使用してのIUIは、
原因不明不妊と自然妊娠の難しい女性に対して、安全で効果的な治療である」
という論文が、
Lancetという、非常に注目度の高い臨床系の雑誌(2018年391号)に掲載されたのです。
人工授精後の累積生児獲得率を比較したところ、
IUIを施行した101人中31人が出産、
自然経過100人中9人の患者さんが出産できたという、
偶然とは考えにくい統計的有意差のある結果でした。
人工授精を開始するタイミング、
体外受精にステップアップするタイミングは
患者さん側の事情があり、医療計画通りには進まないこともありますが、
それでいいのです。
ご夫婦の気持ちを一つにして進めることが重要だからです。
当院では個別対応のきめ細やかな治療方針を元に、
患者様のお気持ちを聴きながら、
丁寧に治療を進めていきます。