妊活コラム
Ninkatsu Column
「漢方薬」について Vol.4
桂川レディースクリニック こうのとり鍼灸担当の船越です。
これまでのコラムでは「漢方の基礎」をご紹介してきましたが、
今回は「日常生活でも取り入れられる漢方」として
「薬膳」についてお話してみようと思います。
「薬膳」の起源については諸説ありますが、
紀元前の古代中国王朝において「食によって病気を防いだり治したりする」
という概念が生まれたと伝えられています。
東洋医学には「薬食同用」という言葉があり、
食材も薬も同様に扱うべきと考えています。
身体に良いものを食べていれば健康になりますし、
逆に身体に悪いものを摂っていれば不健康になるというのは
当たり前のことですよね。
ですが「身体に良いものだけを食べる」というのも現代では難しく、
食品添加物や農薬、化学調味料のことなどを考えると
何も食べられなくなってしまうかもしれませんので、
少しゆる~く考えていきましょう。
「薬膳」では、食材が持つ性質を「四気」で分類します。
「四気」には、身体を冷やす「寒性」、「涼性」と、
身体を温める「温性」、「熱性」があり、食べる人の体質や体調、
四季の気候状態などによって食材を選びます。
四気の分類 | 主な作用 | 食材の例 |
寒性 | 身体を冷やす | トマト、バナナ、スイカ、ひじき、貝類、もやし、白砂糖 |
涼性 | 身体をやや冷やす | ミカン、イチゴ、レタス、小麦、豆腐、オリーブオイル |
平性 | どちらでもない | サツマイモ、豚肉、牛乳、キャベツ、ハチミツ |
温性 | 身体をやや温める | リンゴ、カボチャ、玄米、牛肉、鶏肉、サバなどの青魚、にんにく、生姜、ネギ |
熱性 | 身体を温める | 山椒、唐辛子、コショウ、シナモン、羊肉 |
- 調理法によって変わることもあります。
- 興味のある方は「薬膳」、「四気」で検索してみてください。
「薬膳」を日常生活で取り入れる場合の注意点です。
- いきなり「足すこと」を考えない
妊活中の方だけではないのですが、
ご自身の身体のためを考えた時に「何を足せば良いのか?」をすぐに考えがちです。「何を食べれば良いのか?」とか「何を飲めば良いのか?」を
考えてしまうことが多いんですね。
しかしまず考えて欲しいのは「何が過ぎているのか?」ということです。
その点から言わせていただくと、
妊活中の患者さんではやはり「白砂糖の摂り過ぎ」の方が多いようです。
現代人の食生活では仕方ないとは思うのですが、
白砂糖の摂り過ぎから身体が冷えてしまっている方が多いと感じます。
前回ご紹介した「五味(「酸味」、「苦味」、「甘味」、「辛味」、
「鹹味(かんみ:塩からい)」のうち、「甘味」には緩める働きがありますので
ストレスで傷んだには有効なことも多いのですが、
「ストレス解消」、「自分へのご褒美」と頻繁に甘いものを摂っていると、
恒常的に身体が冷えてしまいます。
ですから「白砂糖」を減らすようにしてみましょう。
「冷え」が少し軽減されるはずです。
どうしても甘味が欲しくなる時には、
オリゴ糖や黒糖(これらは「平性」の食材)を使うようにすると良いでしょう。
あと、これは男性では「にんにく」と「牛肉」を摂りたがる人が多いようです。
表に示したようにこれらは「温性」の食材ですが、
摂り過ぎると「身体に熱を持つ」ようになります。
熱を持ち過ぎた身体は消耗しやすくなりますので、
身体に元気が出るどころか
精子の産生や運動力に影響が出てくる可能性があります。
まずは日常の食事(間食を含めて)を「過ぎているものはないか?」を
見直してみましょう。
- 温めることに執着し過ぎない
前述したことと逆に思うかもしれませんが、
妊活中の患者さんには「冷え」を自覚している方がとても多いです。
ですから「身体を温めるもの」を
ご自身で摂り入れているということもあるのですが、
それが過多になって逆に「身体に熱を持ってしまっている」ということもあります。
(※便秘気味の人に多いです。温めるものを摂っても便が出ないと、
余計に熱が溜まります。)
ですから、まず「温めること」を探そうとせず、
「冷やしているものを控える」ということから始めてみてください。
確かに妊活中の方の身体をみせていただいていると
「腹部の冷え」がある人が多いのですが、
その冷えは「他の部分に熱が溜まっているため」という場合があり、
単に身体を温めるだけでは解消しません。
そういう人の場合、まず「溜まっている熱を抜いてから温める」という
手順を踏まないといけないのです。
(じゃあどうすれば良いの?となると思うのですが、
「どこに熱が溜まっているのか?」というのは人それぞれで、
しかもご自身で判断するのがなかなか難しいです。
ですから「お身体をみせてもらわないと何とも言えない」んです。すみません…。)
次に「アルコール」についてです。
~お酒の四気~
ストレス解消や身体をリラックスさせるのにお酒を嗜むこともあると思います。
お酒を飲むと顔が赤くなるので「血行が良くなる」とか
「身体を温めるもの」と思われがちですが、
実はお酒の種類によって「四気」が違います。
寒性のお酒の代表格はビールです。
夏場によく冷えたビールは美味しいものですが、
かなり身体を冷やします。
あと、焼酎やウイスキーの水割りやロックも身体を冷やします。
日本酒はお燗して飲むと「熱性」、冷やで飲むと「温性」になります。
ワインは「温性」ですが、赤ワインの方が白ワインよりも温める働きが
やや強くなります。
カクテルなどに使われるリキュール類は基本的には「温性」ですが、
糖分を多く含むものが多くそれらは「やや熱性」となります。
お酒を飲むには「落差」と「頻度」を考えるようにしましょう。
例えば焼酎やウイスキーのお湯割りは
「熱性」でかなり身体を温めてくれますが、
その後体内でアルコールが分解されてお酒が抜けてくると
一気に身体を冷やします。
ワインは「温性」ですので身体が温まった後に冷えるという
「落差」は少ないですが、毎日のように飲んでいると身体に熱が溜まり過ぎ、
身体や頭部に「うつ熱」を起こすことがあるので注意しましょう。
あと、おつまみを工夫して
「四気」のバランスを取るようにすると良いと思います。
例えば、「寒性」のビールを飲むのであれば、
おつまみには「温性」のものを選ぶといった感じです。