1. トップページ
  2. 妊活コラム
  3. 「養生訓」から学ぶ妊活
スタッフの写真

妊活コラム

Ninkatsu Column

「養生訓」から学ぶ妊活

船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師
船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師

桂川レディースクリニック こうのとり鍼灸担当の船越です。

江戸時代に書かれた「養生訓」という本があります。

この本は、本草学者(薬草などを用いる「薬学者」)で
儒学者でもある「貝原益軒」が書いた本で、
この方は平均寿命が40歳程だった江戸時代に84歳まで生きたご長寿さんです。

亡くなる前年83歳の時に、「どうすれば病気にならず、健康で長生きし、
心の平穏を保ちながら過ごせるのか?」という養生法を、
自身の経験も踏まえてこの本を書きあげました。

全八巻あり内容は、薬の飲み方、食事や睡眠、運動などの
日常生活習慣指導だけでなく、「心のもちかた」など
現代で言うストレスマネジメントについてまで書かれています。

自身の経験から書かれているため
全ての人に当てはまるものでは無かったりしますが、
現代になってエビデンスが証明されてきたものもあり、
健康な身体作りのための方法がたくさん詰まっています。

今回のコラムでは、「養生訓から学ぶ妊活」をご紹介していきますね。

~~~~~

● 好きな食べ物でも腹八分、九分でやめること。
飽食し過ぎると、あとで災いとなる。

「腹八分目」と言ったのは益軒先生です。
「少しだけ飲み食いして味の良さを知ること。
多く飲み食いすると満腹して飽きる。」とも書いてあります。

昨今の研究では「血糖値が高い時と低い時の落差が大きいとストレスに弱くなる」ということが分かっています。
常にたくさん食べていて、常に血糖値が高めになっていると、
少し空腹になるだけで血糖値が低めになります。
その際の落差が目立つと、ちょっとしたストレスでも
メンタルが乱れやすくなる…ということになります。

妊活中は、落ち込んだりイライラしやすくなりやすい傾向がありますが、
食べ過ぎてしまうとそれがさらに悪化するかもしれません。

さらに「ご飯の分量を普段から決めておきなさい」と説いています。
「ご飯」は身体に「元気(東洋医学でいうエネルギー)」を与えるものですが、
食べ過ぎると「元気をふさいでしまう」から疲れが取れにくくなると言っています。

「招かれた客人は、出された食事をついつい食べ過ぎてしまうので、
もてなす側はご飯をお茶碗の半分くらいにして提供すること。」と、
自分以外の人の健康を気遣う方法も書いてあります。

(これはご家庭でも応用出来ますね。
お料理やご飯は少なめに盛っておいて食べ過ぎを防ぐ。
足りなければ少しお代わりをする。そうすればコントロールしやすいと思います。)

● 食後にすべきこと

食後は、まず腹を何回かなでおろし、食べ物の消化を助けること。

食べた後に長く座っているのは良くない。
横になって眠るのは絶対に良くない。
これらは「気」をふさぎ、病気になりやすい。

毎食後には三百歩ほど歩くのが良い。
五、六町(約550~650メートル)ほど歩くのは、なお良い。

食後は、消化のために胃や腸に血液が集まります。
別の見方をすれば、胃や腸以外の臓器には血液が少なくなります。
もしかすると、子宮や卵巣の血行が悪くなっているかもしれません。
食後には適度に身体を動かして、全身に血液が回っていくようにしておきましょう。

300歩、500メートル、くらいなら出来そうですよね?

● 「元気」の収支

昼夜を通して、「元気」を養ったことと「元気」を損なったことの、
どちらが多くて、どちらが少ないかを比べてみるとよい。

多くの人は、一日のうち「元気」を養うことは少ないが、損なうことは多い。
そういう日々が続けば「元気」は減ってしまい、病となる。
 「元気」には限りがあるのだ。

「元気」というのは、東洋医学でいう「エネルギー」のことです。

「元気」がエネルギーとなり、物事を考えたり、
身体を動かしたり、内臓を働かせます。
生殖、妊娠、にも「元気」が必要です。

日々、時間が無く疲れていると、
ご自身の生活リズムを客観的に見ることもしなくなっていきます。

「食事の栄養が偏っていないか?」

「睡眠はじゅうぶんに取れているか?」

「適度な運動が出来ているか?」

など、「元気」を養う生活を考えてみましょう。

● お腹が空いてから食べる

お腹の中の食物がまだ消化しないうちに食べると「毒」になる。
お腹の中が空になってから食べるほうが良い。

お腹は減っていないのに、時間になったから食べる、
という生活になっていませんか?

お腹が減ったと感じていないということは、
「血糖値が高いまま」ということです。

血糖値が高い状態で食事をすれば、さらに血糖値が高くなったり、
血糖値を下げるための「インスリン」をたくさん出さないといけないため
膵臓の負担が増えて「糖尿病」になりやすくなります。

インスリンが働きにくい「インスリン抵抗性」の状態は、
糖尿病だけでなく肥満や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)にも関わりが深くなります。
これらは排卵障害の原因となる可能性があります。

お腹が「ぐぅ~」っとなってから食べるようにしてみましょう。

● 人生の三つの楽しみ

およそ、人の楽しむべきことは三つある。
ひとつめは、人として正しい道を歩き、悪事をはたらかず、善を楽しむことである。

二つめは、身に病がなく、快く楽しむことである。

三つめは、長命で、人生を長く楽しむことである。

お金があり、身分が高くても、この三つの楽しみが無ければ、真の楽しみは無い。

「養生訓」には、ストレスマネジメントの方法も書いてあります。
これは、ちょっと「精神論」な感じですが、
「楽しむ」というスタンスは必要かと思います。

「妊活を楽しむ」というと難しいかもしれませんが、
「何かを我慢する」とか「何かを恐れる」というメンタリティでは
身体も心もどんどん弱くなって、「妊孕力」も低下していくかもしれません。

あまりご自身を追い込まず、
少しゆとりを持って「妊活」をして欲しいかなと思います。