
妊活コラム
Ninkatsu Column
不妊治療と食事のヒント:地中海料理と薬膳で心と体をサポート

桂川レディースクリニック こうのとり鍼灸の船越登紀夫です。
最近、妊活をされている方の間で「地中海料理が良い」という話をよく耳にします。そこで詳しく調べてみたところ、地中海料理が単なる流行りではなく、
古くから伝わる東洋の知恵である「薬膳」と
驚くほど多くの共通点を持っていることがわかりました。
今回のコラムでは、地中海料理と薬膳の深い共通点を探りながら、
不妊治療中に特に意識したい、ストレスを和らげ、
体を芯から温めるための具体的な食事のヒントをご紹介したいと思います。
食を通して心と体をサポートし、健やかな妊活に繋がるよう、
一緒に考えていきましょう。
地中海料理と薬膳、実は似ている点がいっぱい!
地理的にも歴史的にも異なる背景を持つ地中海料理と薬膳ですが、
その根底には、自然の恵みを最大限に生かし、
心身のバランスを整えるという共通の哲学が流れています。
1. 季節の食材を大切にする知恵
地中海料理では、その土地でその季節に獲れる野菜、果物、魚などを
積極的に使います。
旬の食材は、ハウス栽培のものと比べて栄養価が格段に高く、
その時期に体が自然と求めるエネルギーを効率よく補給できます。
例えば、春には新芽のアスパラガスやビタミンCが豊富なイチゴが食卓を彩り、
体を目覚めさせます。
夏には抗酸化作用の高いトマトや、体を内側から冷やす効果のあるナスが、
暑さで消耗しがちな体をサポート。
秋には食物繊維豊富なキノコやカボチャが、
冬には体を温める根菜類やビタミン豊富な柑橘類が登場し、
それぞれの季節の養生に貢献します。
旬の食材は、まさにその時期の体が欲する栄養と生命力に満ちているのです。
一方、薬膳においても、個人の体質やその時々の季節の変化に合わせて
食材を選ぶことが基本です。
旬の食材は、体の「気(き)」や「血(けつ)」の巡りを良くし、
五臓のバランスを整える上で非常に重要な役割を果たすと考えられています。
春にはデトックスを促し、肝の働きを助ける「苦味」のある菜の花や
タケノコが推奨されます。
夏には体の熱を冷まし、潤いを補う「涼性」のキュウリや
スイカで体内のバランスを保ちます。
秋は空気が乾燥しやすいため、乾燥を防ぐ「潤い」のある梨や
白きくらげが重宝されます。
そして冬には、体を芯から温める「温性」のショウガや根菜類で
冷えから体を守ります。
このように、地中海料理と薬膳は、
自然のリズムに合わせた食生活を重んじることで、
体が本来持っている力を引き出し、
健康を維持することを目指している点で深く共通しています。
2. 野菜や豆類など植物の恵みをたっぷり摂る
地中海料理の特徴の一つに、野菜、豆、ナッツ、種、玄米などの
全粒穀物を中心にした食生活があります。
これらの植物性食品は、豊富な食物繊維によって腸内環境を整え、
ビタミン、ミネラル、そして抗酸化物質が
体内の余計な炎症を抑えるのに役立ちます。
具体的には、レンズ豆やひよこ豆は、優れた植物性タンパク質と
食物繊維の供給源であり、血糖値の急激な上昇を抑える効果も期待できます。
アーモンドやクルミ、ヘンプシードといったナッツや種子は、
良質な脂質やビタミンEを豊富に含み、細胞の健康維持に貢献します。
オートミールなどの全粒穀物は、ゆっくりと消化吸収されるため、
安定したエネルギー源となり、日中の活動を支えます。
薬膳でも、たくさんの野菜や穀物が料理の基本となります。
薬膳では、それぞれの食材が体にどんな働きをするか、
という視点が非常に重視されます。
例えば、「性味(せいみ)」と呼ばれる温める、冷やすといった性質や、
「帰経(きけい)」と呼ばれる特定の臓器に働きかける作用を考慮し、
個々の体質改善を目指します。
体を潤す働きのある白きくらげ、胃腸の働きを助け、
気を補う働きのある山芋、そして血を補うほうれん草など、
特定の効能を持つ植物性食品が選ばれます。
薬膳の考え方では、個々の食材が持つ多岐にわたる効能を巧妙に組み合わせ、
その人の体質や抱えている不調に合わせた最適な食事を組み立てることで、
体全体の調和を図ります。
3. 体に良い油を選んで積極的に摂る
地中海料理を象徴する油といえば、
エキストラバージンオリーブオイルです。
このオイルは、体に良い「不飽和脂肪酸」が豊富に含まれており、
特に「オレイン酸」が悪玉コレステロールを減らし、
心臓や血管の健康維持に役立つとされています。
サラダにたっぷりかけたり、パンにつけたり、
調理油として日常的に多用されています。
薬膳では、特定の油に限定せず、ごま油やナッツ類、魚の油など、
それぞれの体に合った良質な油を選ぶことが大切だと考えます。
例えば、体が乾燥しやすい方や便秘気味の方には、
体を潤す効果のあるごま油や亜麻仁油が推奨されることがあります。
特に亜麻仁油は、オメガ3脂肪酸の含有量が非常に多く、
現代人に不足しがちなこの栄養素を効率よく補給できます。
オメガ3脂肪酸は、体内の炎症を抑える作用や、
ホルモンバランスを整える可能性も指摘されており、
不妊治療中の方にとって、ぜひ注目したい油です。
薬膳の観点からは、血の巡りを良くし、
体の機能を円滑にする「活血化瘀(かっけつかお)」の働きがあるとも
考えられています。
4. 体に優しいシンプルな調理法
地中海料理では、食材本来の味と栄養を最大限に引き出すために、
生で食べたり、蒸したり、煮たり、焼いたりといったシンプルな調理法が主流です。
例えば、魚のグリルは、魚本来の旨味を閉じ込めつつ、
余分な油を使わずに調理できるため、消化にも良いとされています。
野菜のオーブン焼きは、じっくりと火を通すことで野菜の甘みを引き出し、
栄養素の損失を最小限に抑えられます。
また、豆の煮込み料理は、時間をかけて煮込むことで、
硬い豆も柔らかく、消化吸収しやすくなります。
これらの調理法は、高温で長時間炒めたり揚げたりするよりも、
食材に含まれるビタミンなどの熱に弱い栄養素を
保持しやすいというメリットがあります。
薬膳も、食材の持つ力を最大限に引き出すために、
時間をかけて煮込んだり、蒸したりする料理が多いのが特徴です。
これにより、食材の有効成分が効率よく溶け出し、体への吸収率が高まります。
また、胃腸に負担をかけずに栄養を摂ることができるため、
体の弱い方や病後の回復期にも適しています。
例えば、漢方薬を煎じるように、
食材の効能を引き出す薬膳スープやおかゆなどがよく作られます。
これらの調理法は、特に冷えやすい体質の方には推奨され、
体を内側から優しく温め、滋養強壮に繋がると考えられています。
5. 心の健康も大切にする「共食」の文化
地中海の人々は、家族や友人と食卓を囲み、会話を楽しみながら食事をする
「共食」の文化をとても大切にしています。
食事を通して心が満たされ、リラックスできるこの時間は、
精神的な満足感をもたらし、ストレスの軽減にもつながるとされています。
食事は単なる栄養補給だけでなく、大切なコミュニケーションの場であり、
心を豊かにする時間だと考えられています。
食後に体温が上がることも、心身のリラックスに繋がるでしょう。
薬膳もまた、「食べ物は体だけでなく、心にも影響を与える」という考え方を
根底に持っています。
そのため、心を落ち着かせたり、気分を良くする食材を選ぶこともあります。
例えば、香りの良いハーブティーや、自然な甘みのあるなつめ、
心が落ち着くセロリや春菊などが、心の安定に用いられます。
このように、日々の食事を通して心身のバランスを保つことは、
不妊治療の道のりにおいても非常に重要な要素となります。
食事の時間を大切にし、心から「美味しい」「楽しい」と感じることは、
治療を続ける上での大きな心の支えとなるでしょう。
不妊治療中に特に意識したい「自律神経を整える」「体を温める」食事のヒント
不妊治療中は、期待と不安、様々な情報に触れることで、
ストレスを感じやすく、自律神経のバランスが乱れたり、
体が冷えやすくなったりすることが少なくありません。
地中海料理と薬膳の知恵を日々の食生活に取り入れて、
心身ともに健やかな状態を保ち、治療をサポートしましょう。
1. 自律神経を整える食事で心の安定を
ストレスが多いと、自律神経のバランスが乱れ、不眠やイライラ、
消化不良など、体の様々な不調に繋がることがあります。
食事を通して心を落ち着かせ、
自律神経のバランスを整えることを意識しましょう。
- 心を落ち着かせる食材を取り入れる
セロリ、春菊、シソ、ミントなどの香りの良い野菜やハーブは、
その香りが脳に直接働きかけ、イライラを鎮め、
リラックス効果をもたらすことが知られています。
サラダやスープ、お茶などで積極的に取り入れましょう。
乾燥させたみかんの皮(陳皮)、ジャスミン茶、カモミールティーなども、
香りの力で心を穏やかにしてくれます。
薬膳食材では、心を穏やかにする作用のある「酸棗仁(さんそうにん)」や
「百合根(ゆりね)」を、お茶や煮物で取り入れるのも良いでしょう。
また、バナナ、鶏肉、乳製品などに含まれる必須アミノ酸「トリプトファン」は、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料となり、
気分を安定させるのに役立ちます。
さらに、マグネシウムを多く含むナッツ類や緑黄色野菜も、
神経系の働きをサポートし、心身の緊張を和らげる効果が期待できます。
- 腸内環境を整える
「脳腸相関」という言葉があるように、自律神経と腸は密接に関わっています。
腸の状態は、脳の働きや精神状態に大きな影響を与えることが分かっています。
腸内環境が整うと、セロトニンなどの神経伝達物質の生成が促進され、
自律神経のバランスも安定しやすくなります。
食物繊維が豊富な野菜、海藻、きのこ、豆類を積極的に摂り、
腸内細菌のエサとなるプレバイオティクス(善玉菌の餌となる難消化性成分)を
増やしましょう。
また、ヨーグルト、味噌、納豆、ぬか漬け、キムチ、
甘酒などの発酵食品を摂ることで、腸内の善玉菌(プロバイオティクス)を
増やし、腸内環境を良くすることができます。
地中海料理の定番である全粒穀物や豆類は、
腸に良い食物繊維がたっぷり含まれています。
規則正しい排便は、自律神経の安定にも繋がります。
- 食事を楽しむ時間を作る
一人で慌ただしく食べるのではなく、
家族やパートナーと一緒に食卓を囲む時間を大切にしましょう。
会話を楽しみながら食事をすることで、リラックス効果が高まり、
ストレス軽減につながります。
慌てて食べるのではなく、ゆっくりと食事を味わうことで、
消化吸収も良くなり、心も体も落ち着きます。
食事の前に深呼吸をする、一口ごとに味わって食べる、
といったマインドフルな食べ方も、自律神経を整えるのに役立ちます。
また、食事の盛り付けを工夫したり、好きな音楽をかけたりすることも、
気分を上げる効果があります。
食事は、日々の生活の中のささやかな楽しみとなり、
心の栄養にもなる大切な時間です。
2. 体を温める食事で巡りを良くする
体、特に下腹部が冷えていると、
血流や「気」の巡りが悪くなりやすくなります。
これにより、生理不順や排卵障害など、
不妊治療に関わる様々な不調に繋がる可能性も考えられます。
体を内側から温める食事を心がけ、
体温を上げて心身ともにリラックスできる状態を目指しましょう。
- 体を温める食材を積極的に摂る
ショウガ、ネギ、ニラ、ニンニク、トウガラシ、シナモン、
黒胡椒などの香辛料や、体を温める効果が高い野菜を積極的に摂りましょう。
これらは薬膳で「温性」や「熱性」の食材と呼ばれ、
体の中から熱を生み出す作用があります。
例えば、ショウガは「乾姜(かんきょう)」とも呼ばれ、
体を温めるだけでなく、胃腸の調子を整え、気の巡りを良くする効果があります。ネギは体を温め、発汗を促し、風邪の初期症状にも良いとされます。
シナモンは体を温めて血行を促進し、冷え性改善にも役立ちます。
スープや炒め物、煮込み料理などに積極的に活用しましょう。
鶏肉、エビ、羊肉なども体を温める性質があります。
また、かぼちゃ、レンコン、ゴボウ、ニンジンなどの根菜類も、
体を芯から温めてくれる食材です。
これらの食材は、冬の寒い時期だけでなく、
冷えを感じやすいときに意識して摂るようにしましょう。
- 温かい飲み物・食べ物を中心に
冷たい飲み物や食べ物は体を冷やしてしまうので、
できるだけ常温か温かいものを選ぶようにしましょう。
特に、朝一番に冷たいものを摂ると、胃腸に負担がかかり、
体温を下げてしまうことがあります。
胃腸の働きが低下すると、栄養の吸収も悪くなり、
全身の冷えに繋がる可能性もあります。
朝食に温かいスープやお味噌汁を取り入れたり、
ノンカフェインのハーブティー(ルイボスティー、ショウガ紅茶、ほうじ茶など)を飲むのもおすすめです。
これらの飲み物は、カフェインを気にせず、
体を温めながらリラックス効果も得られます。
薬膳では、じっくり煮込んだ薬膳スープが体を温め、
滋養強壮に役立つとされます。
鶏肉、ショウガ、なつめ、クコの実などを入れたスープは、
手軽に作れて、体を温める効果が非常に高いため特におすすめです。
- 調理法を工夫する
生野菜ばかりでなく、蒸し料理、煮込み料理、
温かい鍋物などを積極的に取り入れましょう。
これらの調理法は、食材を加熱することで消化しやすくなり、
体への負担を減らしながら体を温める効果を高めます。
体を温める食材と組み合わせて調理することで、より効果が期待できます。
例えば、体を冷やすとされるトマトやキュウリも、
加熱してスープに入れたり、温かい炒め物に加えたりすることで、
体を冷やす作用を和らげることができます。
また、ゆっくりと時間をかけて食事をすることで、
体が温まりやすくなり、消化吸収も促進されます。
食後すぐに体を冷やすような行動(冷たい飲み物を飲む、薄着になるなど)は
避け、温かい状態を保つように心がけましょう。
温かい食事は、文字通り体温を上げるだけでなく、
心にも安らぎを与え、リラックス効果を高めてくれます。
地中海料理の代表例を食卓に取り入れてみよう
地中海料理は、たくさんの野菜、魚介類、
オリーブオイルをたっぷり使うのが特徴です。
普段の食卓に、ぜひ以下の代表的な料理を取り入れてみてください。
手軽に取り入れられるものばかりです。
- ギリシャ風サラダ(ホーリアティキサラダ)
トマト、キュウリ、ピーマン、赤玉ねぎ、オリーブ、フェタチーズを
シンプルに合わせたサラダです。
オリーブオイルとオレガノで風味をつけ、
野菜の栄養と良質な脂質を一度に摂ることができます。
色鮮やかな野菜は、視覚的にも食欲を刺激し、食事を楽しくしてくれます。
- アクアパッツァ
白身魚(タイやタラなど)をアサリ、ミニトマト、オリーブ、
ハーブ(パセリなど)などと一緒に煮込んだイタリアの魚料理です。
魚介のうまみが凝縮され、シンプルながらも栄養満点です。
魚から摂れるDHAやEPAは、体内の炎症を抑え、
血流を良くする効果も期待できます。
ハーブの香りが心を落ち着かせる効果もあります。
- フムス
ひよこ豆をベースに、ごまペースト(タヒーニ)、レモン汁、
ニンニクなどを混ぜて作るペーストです。
パンや野菜スティックにつけて食べることが多く、
良質な植物性タンパク質と食物繊維が豊富です。
ひよこ豆は、食物繊維だけでなく、葉酸や鉄分も含まれており、
不妊治療中の方におすすめの食材です。
まとめ
地中海料理も薬膳も、「自然の恵みを最大限に生かして、心身のバランスを整える」という共通の考え方を持っています。
不妊治療中は、ご自身の体と心と深く向き合う大切な時期です。
ストレスで乱れがちな自律神経を食事で整え、
体を芯から温める食生活を心がけることで、心身ともにリラックスし、
体温を上げる手助けとなるでしょう。
体が本来持っている力を引き出し、
不妊治療の負担を少しでも軽くすることが出来れば幸いです。
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桂川レディースクリニック併設 こうのとり鍼灸はこのような方におススメです。
◇ 冷えが気になる
◇ 疲れが取れない
◇ 自律神経が乱れているかも?
◇ 運動不足で代謝が悪い
◇ ホルモンバランスが悪い
◇ ストレスが溜まっている
もし、当てはまるものがあれば、こうのとり鍼灸に相談に来てくださいね。
「健康」に近づけ、一緒に妊娠しやすい身体づくりをしていきましょう。
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【こうのとり鍼灸ルーム】
開催日:毎週水・土曜日 14:00~19:00
受付時間(14時・15時・16時・17時・18時)*施術時間は40分程度
場所:当院4階 エステルーム
料金:不妊治療サポート(鍼灸治療、自律神経調整を含む) 7,000円(税込)
担当:船越鍼灸整骨院 船越 登紀夫
*ご予約は1回分ごとの受付になります
◇ 船越鍼灸整骨院 → https://funa-in.com/