1. トップページ
  2. 妊活コラム
  3. 凍結融解胚移植について~自然周期とホルモン補充周期~
スタッフの写真

妊活コラム

Ninkatsu Column

凍結融解胚移植について~自然周期とホルモン補充周期~

塩見 朋也/胚培養士
塩見 朋也/胚培養士

みなさん、こんにちは!培養部です。
琵琶湖の湖面がきらきら輝く夏の真っ盛りですね。
まだまだ暑い日が続きますが、体調を崩されていませんか?
この季節はちょっとした疲れもたまりやすい時期ですので、
どうぞご自愛ください。

さて、前回は『受精卵の移植方法』のお話の中で採卵した後、
受精卵を凍結保存せずに採卵した周期で移植を行う

新鮮胚移植

採卵した後、受精卵を凍結保存し、
別の周期で凍結保存した受精卵を融解し移植を行う

凍結融解胚移植

移植方法として、2種類あるとお伝えさせていただきました。

今回は、「凍結融解胚移植」について深堀していこうと思います。

凍結融解胚移植は、上記の通り、採卵の時に得られた受精卵を凍結保存し、
採卵とは別の周期で移植を行います。
そのため、別の周期で移植を行うための準備が必要となります。
準備というのは子宮内膜を受精卵が着床できる環境にすることです。

その方法として、大きく分けて2パターンあります。

  • 自然周期

自然な排卵のタイミングに合わせて移植を行う方法です。
排卵のタイミングを計るために超音波検査や採血を行います。

この方法では発育した卵胞から産生されるホルモンにより
受精卵が着床できる子宮内膜を作ります。

状況によっては、卵胞を発育させるために薬剤を使用することもあります。

~メリット~

  • 薬剤での身体への負担が少ない
  • 副作用が少ない
  • 費用を抑えることが可能

~デメリット~

  • 通院回数が増える(排卵確認のため)
  • 月経周期が不安定だと選択できない場合がある
  • 移植日を指定しにくい
  • ホルモン補充周期

卵胞から産生されたホルモンを利用し子宮内膜を調整するのではなく、
薬剤を使用し、受精卵が着床できる子宮内膜を調整します。

月経開始日より3~5日後から薬剤を使用し、
一定以上の厚みになるように子宮内膜を育て、
途中で薬剤を追加し適切な移植日を決定します。

基本的にはこの方法で、卵胞が発育することはありません。
※まれに卵胞が発育することはあります。

~メリット~

  • 移植日を調整しやすい
  • 月経周期が不安定でも選択できる

~デメリット~

  • 服用する薬剤数が多い
  • 移植後/妊娠成立後も一定期間薬剤を服用する必要がある

以上が、凍結融解胚移植を実施するための準備の方法の説明になります。

その他、お伝えすべき情報として、両方法の妊娠率についてご説明します。

両方法の妊娠率について言及した
報告(Zaat TR, et al. Hum Reprod Update. 2023)によると
自然周期とホルモン補充周期の妊娠率に大きな差はないとしています。

同報告内には周産期予後に関する内容もまとめられており
自然周期の方が、周産期予後が良好であることが多いとしています。

ここまでくると自然周期の方が良いと感じる方も多いと思いますが、
前述した通り通院回数が多くなることや移植日を予想しづらいことから
仕事などの日常生活との両立が難しい方法である
ということも考えなくてはいけません。

どちらが自分に適しているのか分からず、
どのように選択し、治療を進めていけば良いのかと
悩むこともあるかと思います。

自然周期とホルモン補充周期に関して
今のところ一概にどちらが良いということはなく、
ご自身の希望、状況や生活に合った方法をご提案させていただいています。

今回の移植方法だけでなく、
不妊治療は不安や分からないことが多い治療です。

当院では、患者様1人1人に合った治療を
医師をはじめとしたスタッフがサポートできる体制を整えています。

分からないことなどあれば、安心してご相談ください。

今回はここまで次回をお楽しみに!