妊活コラム
Ninkatsu Column
妊活と腸活 その①
桂川レディースクリニック こうのとり鍼灸担当の船越です。
「腸活」という言葉を耳にする機会が増えてきたように思います。
「腸内環境を良くすれば健康になる」という考えで、
色々な食品や飲料、サプリメントが販売されています。
「腸活したら妊娠出来た!」という話もあったりするので
興味を持っている方も多いのかもしれません。
「腸活って何?」
「腸活って何をすれば良いの?」
「腸活するとどうなるの?」
など、基本的なところからご紹介させていただきます。
腸は、食べた物の消化と栄養の吸収に関わるだけでなく、
免疫と脳や自律神経など神経の働きにも
関与していることが分かってきています。
腸内環境が乱れると、
免疫が過度に働き「妊娠免疫寛容」が下がったり、
自律神経が乱れ、子宮、卵巣への血流が悪くなったり
ホルモンバランスが崩れやすくなる…
ということが考えられるのです。
便秘やガスが溜まりやすいなど
日常的に腸のトラブルがある人は、
腸内環境の乱れが妊活の邪魔をしているのかもしれません。
食生活を改善して腸内環境を整えるには
数カ月かかるという報告もありますので、
今日から「腸活」を始めていきましょう!
【腸内細菌の基礎】
ご存知のように腸の中には「菌」がいます。
腸の中だけではなくて皮膚や粘膜、腸以外の内臓など、
人の身体には約1000種、数百兆個、総重量1.5kgもの細菌が住み着いています。
その菌が我々にとって有益なものもあれば、害をなす悪い菌もいます。
悪い菌であっても、身体がそれに負けなければ問題はありませんが、
身体が弱っていれば負けてしまって病気になるかもしれません。
我々の身体以外の周りの環境にも
たくさんの細菌が居て我々と「共生」しており、
無菌状態というのはあり得ません。
「善玉菌」とか「悪玉菌」というのを聞いたことがあると思いますが、
善玉菌だけが腸の中に住み着いていれば良いのか、
悪玉菌が全く居ないのが良いのかというとそうではなくて、
そのバランスが重要なのです。
「良い菌、悪い菌のバランスを整えて、菌とうまくつき合っていく」というのが、
腸活の基本と言えるでしょう。
腸の中を観察すると、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が
各々がコロニー(集団)を形成しています。
そのような腸内細菌分布の状態を「腸内フローラ」と呼んでいます。
(日本語では「腸内細菌叢」と呼びます。叢とは「草むら」の意味です。)
ネットなどで「腸内フローラを良い状態に保つ」という表現を見かけますが、
これらの「腸内細菌のバランスを保つようにしましょう」
という意味で捉えておけば良いと思います。
「バランス」というと均等な割合をイメージしがちですが、
腸内細菌の比率が、善玉菌30~40%、悪玉菌10%、
日和見菌50~60%というのが良い腸内環境と言われています。
「日和見」とは、
「普段は傍観しているが、形勢を見て有利な側に追従する」ということです。
日和見菌は、普段は身体にあまり影響しないのですが、
悪玉菌が増えてくると悪玉菌の味方をするようになり、
身体に悪影響を及ぼすようになります。
逆に善玉菌が増えてくると善玉菌側の味方になり、
身体に良い影響を与えてくれるようになります。
ですから日和見菌が我々の身体の味方になってくれるように、
善玉菌が優勢な状態を保つことが大事です。
もしも、悪玉菌の勢力が強くなると、
悪玉菌や悪玉菌が作り出す身体にとって
悪い物質に対して免疫が働くようになります。
免疫というのは身体にとって悪影響を及ぼすものに対して「排除」する働きです。
免疫が正常に働いている時には
悪影響を及ぼすものだけを「選択して排除」しようとしてくれるのですが、
免疫がコントロール出来なくなってくると
悪いものだけを選択するという余裕が無くなってくるので、
「体内に入ってくるものは何でも排除する!」という状態になります。
つまり、精子にも受精卵にも胎児にも免疫が過度に働くようになり、
着床や妊娠の維持が出来なくなる可能性が出てくるという事です。
(妊娠免疫寛容の低下)
その他、腸内の善玉菌は、食物繊維を栄養にして活性化し
ビタミンB群や葉酸などを産生してくれますので、
妊活中の方は積極的に「腸活」を行いましょう。
【善玉菌の種類と増やすための食生活】
代表的な善玉菌には、
ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などがあります。
これらの菌を腸内に増やし、
悪玉菌の活動を抑えるようにしていきましょう。
腸内環境を整える食材としてはヨーグルトなどの乳製品が代表的です。
ヨーグルトには乳酸菌が多く含まれているので腸活に悪くはありません。
しかし、日本人の腸は欧米人に比べて乳酸菌が少なく、
ビフィズス菌や酪酸菌の割合が多いので、
効果的に腸活するのであればこの2つを増やす方が
日本人には合っていると考えられています。
ビフィズス菌、酪酸菌などを活性化させるためには、
これらを含むぬか漬けや味噌、納豆などの「発酵食品」がおススメです。
3種の善玉菌を活性化させるのは「食物繊維」ですので、
野菜を豊富に摂ることは腸活の基本となります。
逆に、動物性たんぱく質や脂質を多く含む食品は悪玉菌を増やしますので
食べ過ぎにはご注意です。
次回は「腸活と自律神経」についてご紹介します。