1. トップページ
  2. 妊活コラム
  3. 妊活の土台を支える「お腹の温活」と腹巻きの活用術
スタッフの写真

妊活コラム

Ninkatsu Column

妊活の土台を支える「お腹の温活」と腹巻きの活用術

船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師
船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師

桂川レディースクリニック こうのとり鍼灸の船越登紀夫です。

今年2025年の夏は、日本の観測史上最も暑い夏となりました。
気象庁の発表によると、6月から8月の国内平均気温は平年を大幅に上回り、
過去の記録を塗り替える記録的な猛暑に日本列島は見舞われました。
この異常な暑さは、私たちの生活様式にも大きな変化をもたらしました。
猛烈な日差しを避け、室内では冷房を強めに効かせ、
冷たい飲み物を口にする機会が格段に増えたことで、
体は知らず知らずのうちに「隠れ冷え」の状態に陥っています。

天気予想によると、今年は過ごしやすい秋が短く、
例年以上に寒い冬が早く到来するかもしれないようです。
特に妊活をしている女性にとって、
この「冷え」の問題は決して軽視できません。

こうのとり鍼灸に来られる方の多くが、手足の冷え、
下腹部の冷えといった体感的な症状を訴えます。
冷えは単なる体感の問題ではなく、
血流、ホルモン、自律神経の三つの働きに深く影響し、
妊娠の土台となる子宮や卵巣の機能に直結すると考えられているからです。

現代医学の視点では、冷えは血管の過度な収縮による血流不足を招き、
ホルモンの分泌リズムや自律神経の働きを乱すことが知られています。
一方、東洋医学においても、
冷えは「陽気の不足」という生命エネルギーや
生殖力の低下につながる重要なサインと捉えます。

今回のコラムでは、妊活中の女性が心身ともに
健康な体づくりを進める一助となるよう、
①腹部を冷やすことの害、
②腹部を温めることの効果、
③腹巻きと温活の具体的な実践法の三点を、
より詳細に整理してお伝えします。


① 腹部を冷やすことの深刻な害

特に子宮や卵巣といった生殖器官が集まる腹部が冷えることは、
妊活にとって複合的な悪影響を及ぼします。

血流の停滞> 子宮内膜と卵子の質への影響

腹部が冷えると、末端だけでなく内臓周辺の血管も収縮し、
子宮や卵巣に届けられるべき血流が停滞します。

  • 子宮内膜の発育不全> 十分な血流が届かないと、子宮内膜に栄養や酸素の供給が不十分となり、内膜が薄くなったり、硬くなったりする可能性があります。
    これは受精卵の着床環境を悪化させる直接的な要因となり得ます。
  • 卵巣機能の低下> 冷えによる血流不足は、卵巣にも影響を与えます。
    卵子が成熟していく過程で必要な成長因子やホルモンを運ぶ血液が滞ることで、
    卵子の質が低下したり、排卵がスムーズにいかなくなったりするリスクが
    高まります。

ホルモン分泌への悪影響> リズムの乱れ

体温の低下や血流不足は、脳と卵巣を結ぶデリケートなホルモン分泌の経路にも
影響を与えます。

  • 司令塔の混乱> 体温や血流の変化は、ホルモンの司令塔である視床下部や
    下垂体にストレス信号として伝わります。
    その結果、卵巣へと指令を送るホルモン(FSH、LHなど)の分泌リズムが乱れ、
    排卵が不規則になったり、黄体機能が不安定になったりすることがあります。
  • プロゲステロンの不足> 冷えは、妊娠維持に重要なプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を妨げることがあります。
    このホルモンが不足すると、着床後の内膜維持が難しくなり、
    流産のリスクにも関わってきます。

自律神経の乱れ> 全身の不調と子宮の過緊張

冷えは、私たちの意志とは関係なく体の機能を調整する自律神経系
大きな負担をかけます。

  • 交感神経の優位> 体が冷えを感じると、生命維持のために
    交感神経(興奮、緊張、活動の神経)が過剰に優位になります。
    これにより、リラックスをつかさどる副交感神経(休息、修復、消化の神経)の
    働きが抑えられてしまいます。
  • 子宮の過度な緊張> 交感神経が優位になると、全身の筋肉や血管が緊張し、
    子宮周辺の筋肉も硬く収縮した状態になりやすくなります。
    子宮が過緊張している状態は、受精卵の着床にとって好ましくありません。
  • その他の不調> 睡眠の質の低下、消化機能の不振(便秘や下痢)、
    全身の疲労感など、妊娠に必要な体調管理を難しくする複合的な
    不調につながります。

東洋医学的な捉え方> 「腎や脾の陽気不足」と
「瘀血」

東洋医学では、腹部の冷えを主に「腎や脾の陽気不足」と考えます。

  • 腎の陽気不足> 「腎」は生命力、生殖、成長に関わるエネルギーを貯蔵する
    重要な臓器とされ、特に「陽気」(体を温める力)が不足すると、
    子宮や卵巣の働きが低下し、不妊や流産と深く関係するとされます。
  • 脾の陽気不足> 「脾」は消化吸収と水の代謝を担っており、
    その陽気が不足すると、消化機能が低下し、
    必要な栄養が子宮に届きにくくなります。
  • 瘀血の発生> 冷えによって血流が悪くなる状態を
    「瘀血」(おけつ、血の滞り)と呼びます。
    月経血にレバーのような塊が多い、生理痛が強いといった症状は、
    この瘀血のサインであり、子宮内の環境が滞っていることを示しています。

② 腹部を温めることで得られる効果

腹部を温めることは、単に心地よさだけでなく、
身体の根幹から妊娠力を高めるための重要なアプローチです。

血流の飛躍的な改善> 細胞レベルでの活性化

お腹を温めることで、腹部の血管が拡張し、子宮や卵巣への
血流が格段に増加します。

  • 質の高い内膜> 血流が整うことで、子宮内膜に十分な栄養と酸素が供給され、
    内膜が厚く、柔らかく、ふかふかとした受精卵の着床に適した環境が
    整えられます。
  • 卵子の成熟促進> 卵巣の血流が改善されることは、
    卵子の成長をサポートする細胞への栄養供給をスムーズにし、
    質の良い卵子を育む助けとなります。

ホルモン分泌経路の安定

温めによって血流が改善されると、
脳と卵巣をつなぐホルモン分泌の経路もスムーズになり、
ホルモンバランスが安定しやすくなります。
その結果、排卵や黄体機能が安定し、
月経周期の乱れが改善される効果が期待できます。

自律神経の調整とメンタルケア

腹部を温める刺激は、副交感神経を優位にし、
体を休息・修復のリラックス状態へと導きます。

  • 心身のリラックス> 心拍や血圧が安定し、ストレスによる緊張が緩みます。
    また、副交感神経が優位になると、セロトニンといった「幸せホルモン」が
    分泌されやすくなり、妊活に伴う不安やストレスの軽減にもつながります。
  • 睡眠と消化機能の改善> 温活は睡眠の質や消化機能の回復にも作用し、
    全身のコンディションを底上げします。

東洋医学的な捉え方> 「陽気を補う」養生

東洋医学では、温めることを「陽気を補う」行為と捉えます。
陽気が満ちることは、血流を改善し(血行促進)、全身を温め(温煦作用)、
生命力や生殖力といった「腎の力」を養うことにつながります。
これは、不妊治療の土台となる最も大切な養生の一つです。


③ 腹巻きと併用したい具体的な温活の実践法

腹部の温活は、日常のちょっとした習慣で大きく変えられます。
手軽で効果的な腹巻きの活用法と、
それをさらにサポートする温活をご紹介します。

腹巻きの利点と実践のポイント

腹巻きは、特別な道具や時間が必要なく、
衣服の下に装着するだけで下腹部を持続的に温められる最もシンプルな温活法です。

【実践のポイント】

  • おへそから仙骨までカバーする> 子宮や卵巣を含む下腹部だけでなく、
    背中側の仙骨部(お尻の割れ目の少し上の平らな骨)を
    覆うように巻くことが重要です。
    仙骨の周辺には太い血管や自律神経が通っているため、
    この部分を温めることで、効率よく腹部全体に温かさが伝わります。
  • 適度な締めつけ> きつすぎるとかえって血流が阻害されてしまいます。
    心地よいフィット感で、腹部を優しく包み込むタイプを選びましょう。
  • 素材の選び方> 吸湿性と保温性のバランスがとれた天然素材がおすすめです。
    • シルク> 夏は汗を吸い、冬は保温するオールマイティな素材です。
      薄手で響きにくいため、一年中活用できます。
    • オーガニックコットン> 肌に優しく、保温性も高い万能素材です。
    • ウール/カシミヤ> 冬場の冷え込みが厳しい時期に特におすすめです。
  • 一年を通しての使用> 夏は冷房の効いた室内や冷たい飲食物によって、
    お腹が最も冷やされやすい季節です。
    薄手の腹巻きをすることで、「冷えの自覚がない夏場の冷え」から
    体を守りましょう。

腹巻きと併用したい温活習慣

温かい食事と飲み物で「内臓から温める」

  • 朝の白湯> 朝起きてすぐに温かい白湯やノンカフェインのお茶を飲むことで、
    胃腸を温め、消化機能と血流をスムーズにします。
  • 根菜類と発酵食品> 体を温める働きを持つ根菜類(ゴボウ、ニンジン、レンコン)や、内臓を温めて免疫力を高める発酵食品(味噌、漬物)を積極的に取り入れましょう。
  • 冷たい飲み物の制限> 冷たい飲み物は胃腸を冷やし、「脾の陽気」を著しく消耗させます。常温か温かいものを意識して選びましょう。

「ツボ」を活用したピンポイント温め

腹巻きと同時に、ツボ周辺にカイロや温灸で熱を加えることは、
相乗効果を生みます。

  • 関元(かんげん)> おへそから指4本分(約3寸)下にあるツボで、
    「丹田(たんでん)」とも呼ばれ、生命エネルギーが集まる場所です。
    ここを温めることで、子宮や卵巣の働きが活性化し、「腎の陽気」が補われます。
  • 三陰交(さんいんこう)> 内側のくるぶしから指4本分上にあり、
    婦人科系の不調に広く用いられるツボです。
    この周辺を温めることで、下半身の血流が改善します。

入浴による温活

  • 湯船に浸かる> シャワーだけで済ませず、38度~40度のぬるめのお湯
    15分~20分ほどゆっくりと浸かることで、体の芯まで温まり、
    副交感神経が優位になります。
    特に半身浴は、下腹部を温めつつ心臓への負担を抑えられるためおすすめです。

まとめ

腹部の冷えは、血流、ホルモン、自律神経、そして東洋医学でいう「陽気」という、妊娠にとって欠かせない体づくりの要素すべてに影響を与えます。
特に観測史上最も暑かった今年の夏を終え、
体内に冷えを溜め込んでいる可能性が高い今、
本格的な冬が来る前に「温活」の習慣を確立することが非常に重要です。

腹巻きは、血流の改善、ホルモンの安定、自律神経の調整という
三つの側面に作用し、妊娠しやすい体づくりを支える基盤となります。

現代医学の知見と、古くから伝わる東洋医学の知恵の両方から見ても、
腹部を温めることは、妊活における最も大切で効果的な養生の一つです。
手軽な腹巻きから、ぜひ今日から温活を始めてみてください。
あなたの体が変われば、妊娠に向けた一歩が大きく前進します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

桂川レディースクリニック併設 こうのとり鍼灸はこのような方におススメです。
◇ 冷えが気になる
◇ 疲れが取れない
◇ 自律神経が乱れているかも?
◇ 運動不足で代謝が悪い
◇ ホルモンバランスが悪い
◇ ストレスが溜まっている

もし、当てはまるものがあれば、こうのとり鍼灸に相談に来てくださいね。
「健康」に近づけ、一緒に妊娠しやすい身体づくりをしていきましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【こうのとり鍼灸ルーム】
開催日:毎週水・土曜日 14:00~19:00  
受付時間(14時・15時・16時・17時・18時)*施術時間は40分程度
場所:当院4階 エステルーム
料金:不妊治療サポート(鍼灸治療、自律神経調整を含む)   7,000円(税込)
担当:船越鍼灸整骨院 船越 登紀夫 

*ご予約は1回分ごとの受付になります

◇   船越鍼灸整骨院 → https://funa-in.com/