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妊活コラム

Ninkatsu Column

妊娠はゴールではなかった

酒井まゆみ/不妊症看護認定看護師
酒井まゆみ/不妊症看護認定看護師

不妊治療を卒業された患者さんのアンケートに、
こんな言葉がありました。

「妊娠はゴールではなかったんだと思いました。」

この言葉を読んだ時、とても心に残りました。

妊活をしていると、どうしても「妊娠すること」が大きな目標になります。
毎月の生理に落ち込んだり、判定日までそわそわしたり。
気づけば生活の中心が「妊娠できるかどうか」になっていることも
少なくありません。

それは自然なことです。

本来、不妊治療は「赤ちゃんに会えるかもしれない」という
希望を持って始まるものだからです。

けれども、思うような結果が得られない経験を繰り返す中で、
期待すること自体が苦しくなってしまうことがあります。

傷つくのが怖くて期待しないようにしたり、
悲しみを感じないように気持ちにふたをしたり。

「妊娠できたら考えよう」

そう思いながら、妊娠後の生活や未来について、
あえて考えないようになっている方もいらっしゃいます。

そして、いざ妊娠すると、
大きな喜びと同時に不安もやってきます。

「本当に大丈夫かな」

「無事に育ってくれるかな」

長い間、不安や緊張の中で頑張ってきたからこそ、
すぐに安心できないのは自然なことです。

また、妊娠中は妊娠中でさまざまな心配事があり、
出産後は慣れない育児に追われ、
毎日があっという間に過ぎていきます。

だからこそ、不妊クリニックを卒業する時に、
一度立ち止まってこれまでの道のりを
振り返る時間を持つことも大切ではないかと思います。

「大変だったけれど、あの時こうできたのはよかったな」

「本当はこんな気持ちだったな」

「よく頑張ってきたな」

そんなふうに振り返ることで、
自分でも気づかなかった思いに出会えることがあります。

また、特別な相談ごとがなくても構いません。

気持ちを整理するために、
妊活相談で話してみるのも一つの方法です。

治療中には言葉にできなかったことや、
胸の奥にしまっていた思いが、
卒業という節目だからこそ見えてくることもあります。

そして、ぜひご夫婦でも治療の日々を振り返ってみてください。

治療中は、お互いを気遣うあまり言えなかった言葉があるかもしれません。

本当は不安だったこと。

つらかったこと。

感謝していたこと。

支えてもらってうれしかったこと。

その時はうまく伝えられなかった思いも、
今なら話せることがあるかもしれません。

不妊治療は、ご夫婦それぞれにとって大切な人生の経験です。
同じ出来事を経験していても、
感じていたことは違うこともあります。

だからこそ、お互いの思いを知る時間は、
これから始まる新しい生活の支えになるはずです。

妊娠は大切な節目ですが、それがゴールではありません。

その先には妊娠生活があり、出産があり、子育てがあり、
それぞれの人生があります。

治療中は結果ばかりに目が向いてしまうこともありますが、
そこにたどり着くまでに歩んできた時間にも、大きな意味があります。

悩みながらも前を向いてきたこと。

何度も傷つきながら歩いてきたこと。

そして、希望を持ちながら治療と向き合ってきたこと。

その一つひとつが、かけがえのない経験です。

妊娠はゴールではなく、新しいスタート。

卒業という節目に、これまでの自分やパートナーの頑張りを振り返り、
「よくここまで来たね」と声をかけてあげてください。

その時間が、これから先の歩みを支える力になると思います。