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Ninkatsu Column

「漢方薬」について Vol.2

船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師
船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師

桂川レディースクリニック こうのとり鍼灸担当の船越です。

「漢方薬って効くんですか?」とか
「どんな漢方薬を飲めば良いですか?」とか
色々とご相談を受けることがありますので、
少しずつご紹介させていただいています。

(前回の記事をまだお読みでない方はこちらへ → 「漢方薬」について Vol.1 )


東洋医学のお薬の処方の考え方は少し独特で、
必ず、患者さんの身体の状態に「証(しょう)」というものを当てはめます。

(「証」についてはこちらの記事をお読みください → 東洋医学的な「不妊」の例 )

かなり大雑把な説明ですが、

「不妊だから〇〇というお薬を使おう。」という考え方ではなくて、
「頭が熱を持ってのぼせていて、そのせいで腹部が冷えて、
各臓器の機能が低下して妊娠しにくい。だから〇〇というお薬を使おう。」
という処方の仕方です。

「頭が熱を持ってのぼせていて、そのせいで腹部が冷えて」という部分が
「証(しょう)」にあたります。

「証」は、患者さん一人ひとりで違っており、
その人の「証」に合わせて漢方の処方が変わります。

「証」は、東洋医学の根本概念である「陰陽」と「五行」を
基にして決めるのですが、かなり専門的な話になりますので、
出来るだけわかりやすく説明していきますね。

ご自身の状態を「何となく」でも良いので観察、確認してみてください。

①虚実(きょじつ)

身体の抵抗力、体力の状態をあらわします。

力が「弱い」、「不足している」、「衰えている」、
「育ってこない」という状態が「虚」です。

逆に、力が「強い」、「満ちている」、「盛んである」という状態は「実」です。

かなりざっくり言うと「元気があるか、ないか?」って感じです。

②寒熱(かんねつ)

冷える性質か熱を生じる性質かを分けるものです。

冷感、手足や局所の冷え、冷えると症状が悪化するなど寒性の症状を
示すものを「寒証」と言います。

熱感、手足や局所(頭部が多い)のほてり、のぼせ、
口やのどの渇きなど熱性の症状を示すものを「熱証」と言います。

この「寒熱」は必ずしも体温の上昇や下降を示すものではありません。

ざっくり言えば「冷えているか、温まっているか?」です。

多くの方は「冷えている」と思って温めるのですが、
それだけでは効果的でない場合もあります。

例えば、ストレスや不安などで脳を使い過ぎると脳に血が集まり過ぎますので
「頭部は熱」となり、脳に血が集まり過ぎるため「腹部は寒」となります。
(このパターンの証は不妊の方に非常に多いです)

「お腹が冷えている」と思ってお腹をカイロなどで温めたりするのですが、
「頭部の熱」を何とかしないとあまり効果が出ません。

③燥湿(そうしつ)

「燥(そう)」は、身体を潤す作用が低下した状態です。

「湿(しつ)」は、身体の水分の異常がみられる状態です。

ざっくり言えば「瑞々しいか、干からびているか?」です。

「燥湿」も全身バランスが崩れることで発生し、
同じ身体でも部位によって混在することが多く、
「皮膚は乾燥して、足が浮腫む」というパターンが多くみられます。

④五臓

東洋医学での「臓器」は、肝・心・脾・肺・腎の5つです。

西洋医学的での臓器と呼び名は同じでも、
どういう働きをしているか?という考え方がかなり違います。

例えば、東洋医学で肝は「気の流れを調節する」という働きを持っていると
考えています。

東洋医学での「気」は、「エネルギー」を意味する場合と、
「感情」を意味する場合がありますが、
肝は両方を調節していると考えています。

ですから、肝が傷んでいると全身にエネルギーがうまく回らなくなり
感情が乱れやすくなったりします。

それ以外の「臓器」にも各々の働きがあるのですが、
「不妊」に最も関わるのが「腎」です。

東洋医学では、人は「先天の気(気=生命を維持するためのエネルギー)」と
いうものを持って生まれてくると考えています。
この「気」の量は生まれた時にだいたい決まっているのですが、
生まれた後に「食べ物」や「呼吸」、「運動」で補うことが可能です。
(生まれた後に作られる「気」のことを「後天の気」と呼びます。)

エネルギーである「先天の気」と「後天の気」を貯めておくのが「腎」で、
このエネルギーは主に「生命維持」、「成長」、「生殖」のために使われます。

「腎」が弱った状態を「腎虚(じんきょ)」と呼び、
「元気がなくなる」、「疲れが取れない」、「不妊(男女とも)」などが
みられるようになります。

「腎虚」への漢方処方としては「八味地黄丸」が有名ですが、
状態によっては「六味丸」、「牛車腎気丸」、「補中益気湯」などを
使うこともあります。

このように、「証」に合わせて漢方を処方し、
身体のバランスを整えていくのですが、
前回ご紹介したように「漢方の効果はゆっくりで緩やか」です。

そして、エネルギーである「気」は上述のように
「食べ物」や「呼吸」、「運動」で補うことが可能ですから、
日常生活を整えつつ漢方を使えば相乗効果が出ると考えられるでしょう。