妊活コラム
Ninkatsu Column
東洋医学的「妊活」シリーズ 『陰陽』
こんにちは こうのとり鍼灸担当鍼灸師 船越登紀夫です。
(今回のコラムは「東洋医学思想」のことを書いてあり、
ちょっとややこしいかもしれませんので、
あまり深く考えず軽い読み物としてお読みください。)
下の図を見たことがある人は多いと思います。
これは「太極図」と言って、古代中国思想では「万物の源」を表しています。
黒いところは「陰」、白いところは「陽」を意味し、
「宇宙の全てのものは陰と陽で出来ている」という東洋思想の根本的な考え方を表しています。
あくまで「陰と陽でひとつ」という考え方です。
昨今、「ポジティブ」という言葉が重宝され、
「ポジティブに考えること」や「アクティブに行動すること」など
「陽」のイメージを持つものが良しとされ、
「陰」のイメージを持つものを嫌う風潮にありますが、
東洋の考え方は、あくまで「陰と陽でひとつ」なんですね。
「太極図」を見るとなんとなくわかると思いますが、
陰と陽は「回っている」んですね。
陰が増えれば陽が減り、陽が増えてくると陰が減る、というサイクルで回りながらバランスを取っています。
なので、東洋医学では「陰陽のバランス」を重視し、そのバランスが崩れていればそれを正すことを治療目的とします。
ここで少し「西洋医学」の考え方で、ヒトの身体を見てみましょう。
ヒトの自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。
交感神経は、身体を「戦う( または逃げる)」のに適した状態にする神経です。
心臓の動きを早めたり、血圧を上げたり、
筋肉に力を入れて身体を守ったり動かしたりします。
簡単に言えば「活発にする神経」と考えれば良いでしょう。
ストレスを感じた時にも交感神経が働きます。
ストレスとなる外敵と「戦う」か、「逃げる」かのに適した状態にするので、
心拍数が上がったり、血圧が上がったり、筋肉もこわばってきます。
副交感神経は、身体を「回復させる」、
「エネルギー吸収」に適した状態にする神経です。
身体をリラックスさせて、疲労した状態から回復させやすくします。
そして活発に働いた筋肉の回復が早めるためのエネルギーを吸収するように
腹部内臓への血流を増やし、胃腸などの消化器官を働かせます。
(生殖器系では、腹部への血流を増やすことで子宮や卵巣の栄養状態を良くします)
なんとなくイメージできると思いますが、
東洋医学でいえば「交感神経は陽、副交感神経は陰」ということです。
西洋医学と東洋医学を合わせていえば、
「交感神経と副交感神経が陰陽となり、バランスを取りながら健康な状態を保とうとしている」ということですね。
僕がみせていただいている妊活中の方には以下のようなパターンが多いように思います。
①「仕事や人間関係でストレスを感じることが多い」 → 交感神経が活発、陽が過多
②「睡眠不足(休息不足)」 → 副交感神経が不活(相対的に交感神経が活発)、陰が不足(相対的に陽が多くなる)
③「運動不足」 → 「血」が巡らないので陽も陰も弱くなる(※生命力が弱くなるということです)
こういう方は、「陽が多過ぎる」、「交感神経が活発になり過ぎている」という状態です。
これは、エネルギーを消費し過ぎている状態ですから
どんどん疲労も溜まりますし、じゅうぶん回復が見込めません。
(そういう状態ではじゅうぶんな生殖機能が発揮できないかもしれません)
上記に当てはまる方は、「陽を減らし、陰を増やす」ことが必要になります。(簡単に言えば「頑張り過ぎず、しっかり休む」という感じでしょうか。)
こうのとり鍼灸ではまず「過度に陽が増えた状態から陽を抜き、陰を増やす」ことを目的として治療を組み立てます。(言い換えると「ストレスなどで交感神経が活発になり過ぎている状態を抑制し、身体をリラックスさせて副交感神経を働かせる」ということになります)
さて、これを読んでいる方はどういう状態でしょうか?
【以下は追加です】
冒頭でも書きましたが、昨今は「ポジティブシンキング」をありがたがる風潮があります。
しかし東洋医学目線で見れば、ちょっと不自然なのです。
現代人の多くは、
仕事も頑張っているし(→ 陽が増えやすい)
ストレスが多いし(→ 陽がすごく増えやすい)
その割に休息が少ない(→ 陽が減らせない)
ので、「常に陽が増えた状態」なんですね。
言い換えると「ずっとポジティブ」、
「ずっと活動している」という状態ということなので、
身体も心も休めていない…。
そんな状態で、「もっとポジティブ!」になる必要があるのかなぁって思います。
たとえ落ち込んだ時でも、不必要に、不自然に、
ポジティブになろうとしなくても、自然にまかせていれば、
人の身体と心にも「陰陽のサイクル」があるのでゆっくりでも、
必ず元気になりますよ。