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妊活コラム

Ninkatsu Column

「漢方薬」について Vol.3

船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師
船越 登紀夫/船越鍼灸整骨院院長・鍼灸師・柔道整復師

桂川レディースクリニック こうのとり鍼灸担当の船越です。

「漢方薬って効くんですか?」とか
「どんな漢方薬を飲めば良いですか?」とか
色々とご相談を受けることがありますので、
少しずつご紹介させていただいています。

(これまでの記事をまだお読みでない方はこちらへ)

→ 「漢方薬」について Vol.1 

→  「漢方薬」について Vol.2 

東洋医学的な「不妊」の例 

 → 東洋医学的「妊活」シリーズ 『陰陽』

前回のコラム(vol.2)でご紹介したポイントです。

  • 東洋医学でいう「五臓」には、肝・心・脾・肺・腎がある。
  • 五臓のうち「腎」は、生命エネルギーである「気」を貯めておく臓器である。
  • 人は「腎の気」によって、「生命維持」、「成長」、「生殖」を行う。
  • 「腎の気」が不足した状態を「腎虚(じんきょ)」と言い、「元気がなくなる」、「疲れが取れない」、「不妊(男女とも)」などの症状が出てくる。
  • 「気」が不足したとしても、「食べ物」や「呼吸」、「運動」で補うことが可能である。

これらのポイントを踏まえた上で、
今回のコラムでは「腎の働きを高め、
妊娠しやすい身体を作るためにはどうすれば良いか?」
ということを東洋医学的観点でご紹介したいと思います。

五行について

「腎の働きを高めるには?」をご紹介する前に、
東洋医学の根本的概念である「五行」について書いておきます。

「五行」とは、「木」、「火」、「土」、「金(金属)」、「水」のことで、
東洋医学では自然界の全ての物は「五行」の性質を持っていると考えています。

人の「五臓」で言えば、「肝」は木の性質、「心」は火、「脾」は土、
「肺」は金、「腎」は水の性質を持つとされており、
その他にも人体を含めた自然界の事象を「五行」の性質に分けたものを
「五行色体表」と言い、下記のようになります。

たくさんあり過ぎてややこしいと思いますので、
参考にしていただきたいところに「赤枠」をつけておきました。

まず「臓」は、前述のように、「肝」は木の性質、「心」は火、「脾」は土、
「肺」は金、「腎」は水の性質を持っています。

生殖活動を司る臓器は「腎」ですから、
「腎」を中心に「五行色体表」を見ていきましょう。

1.「気」

「気」は、どのような気候がどの臓器の傷つけるのか?を表しています。
五行で考えると、「腎」は「寒さ」によって傷つけられる、ということです。
ですから寒い時には出来るだけ身体を「保温」するようにしておきましょう。

2.「時」

各臓器が、どの時間帯に活発に働くのか?を表しています。
「肝は朝」、「心は昼」、「脾は午後」、「肺は夜」、
「腎は夜中」に活発に働きます。
前述のように、腎は生命エネルギーである「気」を貯めこむ臓器です。
夜中には身体を休めて腎が「気」を貯めこむようにしておくべきなのです。

逆に、夜中に起きたまま夜更かししていると、
腎がしっかりと働いてくれないので気が不足して「腎虚」の状態に陥り、
妊娠しにくい身体になるということです。
この辺りは、12時までに眠らないと視床下部、
下垂体が機能しにくくなるという「睡眠のゴールデンタイム」と
通じるものがありますね。

3.「液」

「液」は、五臓が調節している体液のことです。
腎は「唾液」を調節しており、しっかりと唾液を出すことが腎の働きを助け、
逆に腎の働きが低下すると唾液の分泌が悪くなります。
ですから普段から食事の際には「よく噛んで食べる」ようにしましょう。

ちなみに「咀嚼運動」は副交感神経を活発に働かせ、
身体をリラックスさせるように促します。
ストレス過多で交感神経優位になっていると
妊娠しづらいというデータもありますので
「よく噛んで食べること」を心がけてみてください。

4.「禁」

「禁」は、五臓を傷める食べ物です。
生殖機能に関係する「腎」の働きを低下させるのは「甘いもの」です
(もしかすると、耳が痛い方も多いのかもしれませんが…)。

東洋医学で「甘いもの」は身体を緩ませる働きがあるとされており、
ストレスで身体や心がカタくなっている時に適度に摂ることは有効と考えられます。しかし現代人は、恒常的に甘いもの、糖質を摂りがちで、
そのことが「腎」を傷めているという可能性もあります。

昨今、話題になっている「AGE(終末糖化産物)」は、
活性酸素を発生させて身体の細胞を「酸化」させて働きを低下させたり
細胞の「老化」を早めることがわかってきており、
「甘いものの摂り過ぎが腎を傷めて不妊につながる」という
東洋医学の考え方と通じるものがあるのかもしれません。

※AGE(終末糖化産物)についての補足

AGE=終末糖化産物(Advanced Glycation End Products)とは、
過剰な糖が体内のタンパク質と結びつき変形した毒性の強い物質のことで、
「活性酸素」と並んで「老化進行の原因」として注意が必要なものです。
タンパク質が糖を結びついた状態を「糖化」と呼び、
糖化したタンパク質は機能が低下してしまいます。
細胞はタンパク質で出来ていますので、
全身の細胞の糖化が進むと「老化」を早めてしまうことになりますし、
酵素や一部のホルモンもタンパク質から出来ていますので
内分泌系の機能低下にもつながる可能性があると考えられています。

5.「志」

「志」は、五臓が調節している感情のことです。
「五志」と言われ、肝は「怒」、心は「喜」、脾は「思(考)」、
肺は「悲」、腎は「恐」という対応をしています。
例えば、肝が傷んでいる人は怒りっぽくなったりしますし、
逆に怒ってばかりの人は肝を傷めてしまいます。
「腎」を傷める感情は「恐(きょう)」なので、
例えば判定日まで結果を怖がり過ぎていたりすると、
余計に腎の働きを弱めてしまうということになります。

その他、五行色体表から読み取れる「五臓の状態」には色々あるのですが、
東洋医学の「陰陽」と「五行」は説明が難しくて…。

今回は出来るだけ分かりやすいものを選んでみたつもりですので、
参考にしてみてください。